第二章 ハンスの手記

 私は双極性障害をわずらっている。双極性障害のⅠ型だ。躁のときは徹夜で作曲をすることができるが、鬱のときは一日中眠っている。第一交響楽は鬱からよみがえったときに書かれた作品だ。病気がひどいので食べるために職業訓練学校にかよっている。死にたいとおもったこともある。それは大抵鬱のときにあらわれる。私は人に依存しすぎる傾向がある。その昇華はピアノ曲の作曲ににも生かされている。

 

 私はプロテスタント教会にかよっており、ピアノ奉仕をおこなうためにピアノの勉強を独学でおこなっている。ペーターは交響曲ピアノ曲に編曲することが上手だった。マルガリーテは編曲した曲をいとも簡単に弾きこなすことができた。ペーターは統合失調症であったが、双極性障害でもあった。落ち込むと鬱になり一日中ねていることもめずらしくなかった。第二交響楽は不眠症の人たちに書かれた曲だ。

 

 芸術にはお金がかかる。そのために職業訓練学校に通い、最低賃金でお金を稼いで死にたみ(死にたいと思うこと)と格闘しながら作曲活動をしている。ペーターは文学が好きでよくゲーテを読んでいた。ゲーテ叙事詩ファウスト』は旧約聖書の『ヨブ記』にインスパイアされてできた作品らしい。

マルガリーテはチェンバロの名手だった大曲のバッハのゴルドベルク変奏曲を弾くことができた。そのことは私をなぐさめてくれた。死にたみにおびえながら生きているので麦酒をよく飲むクリスチャンとしてはあるまじき行為だ。そして眠剤も飲んでいるので余計に悪い。悪人だ。チェンバロの音に癒されている中二病患者でもあろう。毎日の死にたみと闘いながら作曲しているペーターはいい詩を書いてきてくれるので非常にありがたい。

 

 第三交響楽は鬱のひとのために書いた。鬱がすこしでもよくなるように趣向をこらした。ペーターは指揮がうまく市民合唱団の指揮をおこなっている。

 

 私は手記を書くことが苦手だ。論理的思考が乖離している。それも病気のためだ。