小説『劇団のひととき』

 私は劇団のシナリオライターだった。ジャズを聴きながら執筆に明け暮れている。ジャズを聴きながら書くと即興性が加わることが多いからだ。劇団の名前は「トンプク座」だった。今日の講演はG・ガルシア=マルケスが著した「百年の孤独」を原案にした「十億光年の孤独」という演題だった。稽古は順調に進んでいた。演出家の伴栄作はかなり短気な性格で怒ると灰皿を投げるときもあった。台詞を怒鳴り散らし、稽古場は和やかな雰囲気と緊迫した雰囲気がちゃんぽんになっていた。

 

 あと3週間くらいで「十億光年の孤独」が演じられるのだが、脚本がほとんどできていないじょうたいなのでこまってしまっている。